君色デイズ

「なぁ、前田。」


はぁ…とあたしが小さく息を吐くのと、景雅様があたしの名を呼ぶのはほぼ同時だった。静かに響く声に耳を傾ける。


「…なんでしょう?」

「わがまま言って悪かったな。」


でも、彼から紡がれた言葉に、一瞬耳を疑った。
“悪かったな”だなんて。あの景雅様が。あたしに?


「は…?何ですか、改まって。」


今までそんな言葉をかけられたことがあっただろうか。一体どういう心境の変化なんだろう。カーテンに隔たれているせいで景雅様の表情は分からないけれど。


「こんなパーティーなんざ、本当は出たくねぇだろ。」


紡がれる彼らしからぬ言葉に意表を突かれて。あたしがひどく断り過ぎたのかと思い、少し反省する。