そんなあたしが考え抜いて出した答えは“逃亡”だった。仕事うんぬんより、景雅様にも紗彩様にも会わないで済むことが最善なような気がして。後から景雅様には謝ろうと心に決め、そっと部屋を出た。刹那。


「おい、前田友梨江。」


聞きなれた声にびくっと肩が揺れる。
部屋から出た瞬間、鉢合わせたのは今一番会ってはいけない景雅さまだった。


「どこに行く気だ?」

「け、景雅様…」


意地悪な笑顔を浮かべてあたしを見下ろすから、あたしの笑顔もどんどんひきつる。
そして押しつけられた紙袋の中には、あのドレスが入っていた。


「お前が逃げるなんざ思ってはいねぇが、念のため、だ。」


いや、絶対思っているでしょ。だからここにいたんでしょ!
だってもう!絶対怒ってる…