「大変ね。」


何も、わからないくせに。
お金関係で苦労なんてしたことないくせに。

あたしより少し低い高さから見上げてくる大きな瞳が、あたしの苛立ちを増幅させる。


「紗彩、そーゆーのやめや?」


田岡様の静止を完全無視して、紗彩様は何かを取り出しながらにこりと笑った。


「コレ、あげるわ。」


目の前に差し出されたのは一万円札。…って、一万円札って何。どういうこと。
この子は、初対面のあたしをどれだけ小馬鹿にしたいのだろう。


「紗彩、やりすぎだ。」

「あら景雅、これは善意よ?お金に困っているみたいだったから。」


…そうだね、確かにそうだ。すごくすごく、お金に困ってたよ。
だけどこんなことをされて素直に受け取れるほど、プライドが無い訳じゃない。


「申し訳ありませんが紗彩様、こんなものは必要ありません。」


そう言い切ったのと、目の前の数人が「あっ!」と声を上げたのはほぼ同時だった。