「そう。それなら自己紹介くらいするのが普通なんじゃないかしら?」

「……すみません。前田友梨江と申します。」


ツンとした雰囲気で言い放たれる言葉。
高圧的な態度、棘のある言い方に、あぁ嫌われたんだなって、何となく思った。


「紗彩。」

「なぁに、景雅。」

「その辺でやめておけ。」


そんな不穏な空気をいち早く察したのか、景雅様が紗彩様をいさめる。紗彩様は一瞬不満そうな表情を浮かべたけれど、すぐに笑顔に戻った。でも。


「……掃除用具、持ってまいります。」

「ねぇ、前田さん。」


集めたガラスのかけらを処理しようと、掃除用具をとりに戻ろうと歩き出した背中に再びかけられる声。振り返れば、笑顔の紗彩様と視線が絡む。