もうすぐバレンタイン、てことは。


あたしがカボを意識し出して、もうすぐ一年になるってことだ。

付き合ったのは、そのもうちょっと後だけど。

一年前の今頃は、彼氏彼女になるだなんて想像もしなかった。


あたしはコンビニ店員で、カボはそのお客さん。


当時のあたしにとってカボは、毎晩10時にかぼちゃプリンを買っていく変な男。

カボはいつから、あたしを"山田さん"として認識してくれていたんだろう。



『カボチャは好きですか?』


『嫌いです』



思い返すとなんだかおかしくて、懐かしい。

ほっこり、ちょっとだけ心があったかくなる気がする。


今では比べものにならないくらい、カボのいいところをいっぱい知ってる。

…まぁ、変なところも同じくらい思い知らされたけど。


バレンタイン、ほんとどうしようか。

人生の中で唯一成功したお菓子、ガトーショコラはもうあげちゃったから無しだしなぁ。


「以上!起立!!」


…料理オンチの治し方ってあるんだろうか。

あたしがため息をつくと同時に、ホームルーム終了の号令がかけられた…


その瞬間だった。



「山田さんっ!!」


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