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 一月三日発生の前島実業営業本部主任永嶋雄一朗殺人事件は、捜査が難航しつつある。


 七階建ての前島実業の自社ビルの屋上階であの夜、害者とホシは揉み合った。


 それは否定できない事実だ。


 おまけに四谷にある交差点で一月十三日深夜発生した松岡興業株式会社の岩沼専務ひき逃げ事件も思うように捜査が進まない。


 やはりタイヤ痕の精査は鑑識ではなく、もっと高度な特定が可能な科捜研に頼んだ方がよさそうだった。


 一月も終わりに近い頃、坂野がとうとう痺(しび)れを切らして、岩永に、


「あのひき逃げ事件で残ってたタイヤ痕は科捜研に回しましょう」


 と言う。


「ああ、俺もその方がいいって思ってた」


 即日、タイヤ痕は科捜研へと回された。


 坂野たち新宿中央署刑事課の刑事たちは鑑定が進むのをじっと待ち続ける。