「ついでにお前等、今日は外出禁止だ。
どーせ学校ないんだろ? 世間は日曜だしな。
外出する暇があったらこの部屋、全部掃除しとけ。全部だぞ」
―…こいつ…、おいマジかよ、勘弁しろって。
テーブルに着いてファンデーションを塗りたくっている外貌だけ良いクソ女に、俺は心中で舌打ち。
朝っぱらから俺等をこき使いやがって、俺等はてめぇの召使じゃねえぞ。
ああ、てめぇにとってはそうか。
ガキはてめぇにとって都合の良い召使だもんな。
「母さん、いつ頃帰宅するんですか? 夕食は?
食べておきたいものがあるなら、用意しておきますけど」
朝から外出すると言う母親に、俺は懇切丁寧な敬語で応対する。
自分でも馬鹿馬鹿しいと思うくらいの敬語。
なんでこいつに敬語なんざ使わないといけねぇんだって思うけど、油断させるためにはこれくらい従順ぶっておかないと。
愛想笑いを向ける俺に対し、寝起きの那智は寝癖も直さず、さっさと居間に散らばっている母親の服を片付け始める。
さすがは那智、仕事は一丁前に手早い。
従順兄弟に毎度の如くご満悦な母親様は、「今日はいらねぇ」あんた等はこれで済ましとけ、とばかりに財布から銭出して、ピンッと親指で弾く。
手の平でキャッチした俺は、「ありがとうございます」きっちり礼は言うものの、内心不満だらけだった。
五十玉。
朝昼晩、これで過ごせと?
しかも一人五十円じゃなくて二人で五十円。
何が買えるんだよ、五十円で。
百円商品も買えねぇ、阿呆が。
なんって我が母様は慈悲深いんだ。
食べ盛りな息子に五十円玉って、あーあ、深過ぎで涙が出そうだ、マジで。



