「おかーさん! ブランコで遊ぼう!」
「ぼくも! おかーさん早く!」
青空いっぱいに広がる二つの子供の声。
俺は視線をブランコに投げた。
そこには俺よりも小さな子供二人が各々母親の手を引いて、ブランコに向かって駆けている。
母親は仕方が無さそうに笑いながら、子供達をブランコに乗せていた。
いいなぁ…。
俺は視線を逸らして紙パックのオレンジジュースに目を落とした。
お母さんと公園に行ける子供、羨ましい。
俺のお母さんは絶対にそんなことしてくれないもんな。
「あ、ほらあの子。噂の…」
「あら…、今日も公園に。可哀想ねぇ」
と。
奥様方の井戸端会議が俺の耳に飛び込んできた。
可哀想ってのは俺のことだろう。
きんじょの奴等は俺がお母さんにぶたれていることを知っている。
それを可哀想だって誰もが哀れむけれど、だあれも助けてはくれない。
「誰かがあの子に手を差し伸べてあげればいいのに」
じゃあ、あんたが手を差し伸べてくれよ。
俺は心中で毒づいた。



