あくる日。


俺は学校に連絡を入れて休みを取ると(母さんには那智の風邪の面倒を看るからって報告した)、約束どおり、一日中傍にいた。


熱に魘される那智をずっと介抱していたんだ。


今朝は那智も体温が落ち着いてきて、簡単に熱は下がらなかったものの、軽く食事ができるまでに回復していた。

薬の効果は絶大だな。普段飲まない分、よく効く。


昼頃には那智も喋れるまでに回復。

だから俺は昨日、何があったのか聞くことが出来た。


曰く、今度できた母さんの新しい恋人はすこぶる子供嫌いな奴らしい。


一方で子供に対して嗜虐心のある奴らしく、一昨日の朝から昼、そして昨日の朝から昼まで、暴行を受けていたとか。母親も彼氏のために喜んで子供を差し出したとか。
 
俺の見ていないところで、那智、随分苛められていたらしく、説明の途中から泣き出してしまった。

すぐに俺に言わなかったのは那智なりの配慮。
俺がそいつに苛められるところを見たくなかったから。



「兄さま…、大好きだからぁ」



どうしても言えなかったのだと那智はしゃくり上げた。

言えばきっと、恋人から自分を守ってくれる。

でも俺がそいつに殴られてしまう。



大好きな俺をどうしても傷付けたくなかった。


那智なりの優しさと、その純粋で透明な涙に、俺も視界が潤んだ。


「馬鹿だな…、兄さまといつも一緒だろ?
苦しい時も、悲しい時も、辛い時も…、いつも一緒だ」

「にーさま…、あのね。
おれ、イジメられてる時、死んじゃうかと思った。恐かったんです」


震える手で俺の手を握る那智は、


「どんな時も一緒にいて」


切願してくる。