「ほら、那智。お薬」
カプセルをチラつかせるけど、那智は無反応。
この調子じゃ薬なんて飲めないだろう。
どうすれば那智、薬を飲んでくれるんだ。
途方に暮れ、手の平にカプセルを転がす。
那智が飲んでくれる方法、方法、ほうほ…、あ、そうだ。
確か俺の読んでた小説にこんなやり方が…、一か八かやってみるか。
俺はビニール袋からミネラルウォーターを取り出すと、カプセルと一緒に含む。
そしてそっと那智の唇に手前の唇を重ねて、ゆっくり水を向こうに流し込む。
喉が上下に動くのを確認しつつ、俺はカプセルを口の奥に舌で押し込んで無理やり飲ませた。
嚥下(えんか)を確かめ、俺は弟の口端から零れた舌で雫を拭って、顔を離す。
「おみず…」
もっと欲しい、那智は喉の渇きを訴えてきた。
俺は自分の口に水を含んで、ゆっくりと那智に口移し。
美味しそうに水を飲む那智は、もっと、俺に強請ってくる。熱に魘されてるから喉の渇きがきてるんだろう。
何度か口移しを繰り返したら、那智も落ち着きを取り戻したのか、スーッと寝息を立てて眠りにつく。
まだ熱っぽい息遣いだけど、ちょっと落ち着いたな。
ふーっと俺は息を吐いて、そっと唇に手を当てた。
「成り行きとはいえ…、那智となんか、キスしたカンジ」
いや、でもこれはあくまで口移しだろ。
じゃあ…、キスは?



