ふたりぼっち兄弟 〜No.±0〜【BL寄り】


俺は意を決してドラッグストアに足を踏み入れた。
 
 
店内は明るい照明に照らされて眩しい。

涼しい店内はどうやら冷房が利いているようだ。
ひんやりとした冷風が俺を包み込むように撫でてくる。

はぁ…、息を吐いて俺は風邪薬を探すべく店内を彷徨。
薬が置いてありそうな場所を探して、棚を一つひとつ見ていく。



ダイエット食品、胃薬に塗り薬、あった、風邪薬。



背丈と同じくらいの高さに風邪薬の箱が置いてある。

これさえ入手できたから、那智の苦痛、ちっとは和らぐに違いない。


これさえ、これさえ、あれば。



「……治樹?」



と、背後から声を掛けられて、俺はビクッと体を震わせる。

ゆっくりと振り返れば、まさかの父さんの姿。
なんでこんなところに…、もう退社時間なのか? 早すぎるだろ。

瞠目する俺に、父さんは怪訝な視線を投げてきた。


「な、何?」


俺は純粋な子供の振り、父さんに愛想笑いを向けた。

あからさま動揺している俺に対し、父さんは意味深に視線を投げた後、「面倒だけは起こすな」悪態を付いて歩み寄って来た。

身構える俺の右手首を掴んだと思ったら、裏を返して、財布から五千円札を抜き取り、俺に握らせる。


呆気に取られる俺を余所に父さんは、


「問題を起こしてもらったら迷惑だ」


万引きしようとしていた俺の行動を見抜いて金をくれた。

金がどうして必要なのかも、薄っすらボンヤリ気付いてるみたいだ。俺等が虐待されてること、知っていて背を向けてるし。


そう、この金は俺や那智のためじゃない。


すべては自分と愛すべき別の家族のため。

五千円で問題を起こさずにいてくれるなら安いもんだって思って―――…。