縺れる足のせいで、転倒。
人目も気にせず、すぐに立ち上がった俺は、ネオンが輝き始める街を目指した。
那智は死なせない。
絶対に死なせない。
死なせて堪るものか。
「大丈夫、兄さまが助けてやっからっ。
もしも死にそうだったら、俺も一緒に死んでやるから、だから、大丈夫だぞ。那智」
滲み出てくる涙を服の袖で拭って、俺はただひたすらに街を目指した。
そう目指すは街、薬品は勿論、日用品も置いているドラッグストア。
近所にあって助かった。
そびえ立つ建物を見上げ、切らした息を整えながら、俺は深呼吸を一つ。
「今の俺は無一文…、くそっ、やるしかねぇ」
なんのために上着を羽織っていると思っている。
これは那智の風邪薬を盗むためのカモフラージュなんだから。
大丈夫、何度か万引きってのはやったことある。
犯罪ってのは分かってるけど、俺や那智は飯をよく抜かされてひもじい思いをする。
特に那智は小さいから飢えに耐久性がない。
飢えで苦しむ、その度に俺は那智のために奔走している。
罪を取るか、弟を取るか、天秤に掛けるまでも無い。
俺は那智のためだったら悪人にだってなれる。
今回もそう、ちょっとばかし値の張る盗みを働けばいい話。
百円、二百円のパンを盗むわけじゃないから緊張するけど、この際、構ってられない。



