反応が無い。
ただただ息遣いを乱すだけ。
なんでこんなことに…っ、冷静を欠かさないよう努めながら、俺は急いで那智をタオルで拭いてやった。
綺麗に体を拭いてやって、着替えさせて、自室に戻る。
一組しかない敷布団に那智を寝かせて、熱(ほて)った額に濡れタオルをのせた。
苦しそうに息を弾ませる那智に、俺は顔を顰めた。
「なんで…こんなことに」
こっそりと母さんの寝室からくすねて来た体温計で熱を測ってみる。
九度八分、熱は高かった。
すぐにでも病院に連れて行きたいけど、母さん、病院だけは絶対に行かせてくれない。
俺等の体に虐待の痕があるんだ。
行かせたら最後自分の身の上が危ぶまれるって、絶対に行かせてくれない。
じゃあせめて、風邪薬…、後で母さんに頼み込もう。
嗚呼、こんなことになってるなら、もっと早く、早く、帰っておけば…。
係りの仕事に時間を取られてる場合じゃなかった。
俺は熱に魘されている那智の手を握って項垂れた。



