顔を顰め、俺は忍び足で廊下を歩く。
リビングにはいないみたいだな、あの様子からすると。
んじゃあ…トイレ?
俺はトイレの扉を開けた。
でもやっぱり那智はいない。じゃあ何処に…、勝手に外に出たってこと無いだろうし。
うんぬん考えながら、廊下をうろついていると、風呂場で物音が聞こえてきた。
「風呂場にいるのか、那智」
まさかなぁ、だって風呂場に行く理由なんて…。
嫌な予感がした。
俺は早足で風呂場に向かい、勢いのまま浴室に飛び込む。
愕然とした。
そこには床タイルの上で、びしょ濡れのまま放置されている、哀れな弟の姿。
服までぐっしょり濡れている弟の肌は青白く、見るからに衰弱している。
「なっ、なっ…那智!」
我に返った俺は急いで那智を抱えて呼び掛ける。
真新しい痣が点々と見受けられる上に、荒い息遣い。
俺は那智を体の冷たさにゾッと背筋を凍らせ、急いで額に手を当てた。
「あつい…。熱がある。那智、なち、大丈夫か? 那智、那智!」



