今度は影絵でキツネを作って、
「こんにちは、僕、キツネさん。那智くんもしなよ」
那智もするよう誘う。
無邪気に笑う那智は小さな手でキツネの形を作る。
「こんにちは、ぼくもキツネさん。貴方の弟だよ」
「おっと、僕に弟がいたのか! じゃあ僕は君のお兄ちゃんだね。兄弟だ」
「兄さまとおれも兄弟ですよ」
「ああ、勿論」
影絵で遊ぶ俺等は小さく笑声を漏らした。
寝るまで俺等は影絵で遊んだ。
この夜は涼しい夜で風邪を引きそうだったけど、ついでに空腹だったけど、倉庫の中はすっごく暖かかった。心も温かくなった。
那智が傍にいてくれるからアッタカイんだって、俺は知っていた。
後日―。
俺が学校に登校したら、担任と騒動を起こした奴等が血相を変えた。
だって俺の顔、青痣だらけだったんだから。
誰が見ても、ぶたれたって分かる痣。
でも俺は担任に「自転車に乗ってたら転びました」って答えた。
母さんにそういうよう命令されるしな、それで貫き通した。
どんなに担任が聞いてきても、騒動を起こした奴等が謝って正直に答えるよう言っても、俺は転んだの一点張りだった。
誰も助けてくれない。
余計な事を言えば、母さんに叩かれるだけの結果。那智にも迷惑が掛かる。
味方になってくれそうな面をする担任に、俺は背を向けて心に誓っていた。
自分でこの状況を打破してみせる…って。
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