―――…散々泣きじゃくった俺が落ち着きを取り戻したのは、小一時間経った頃。
いつの間にか親子連れはいなくなっていた。
俺が泣いていることに気まずさを覚えたのかそれとも、昼食を取りに行ったのか分からないけど、気付けば姿が消えていた。
スンッと洟を啜って目を擦る俺は、「ごめんな」同じく目を擦っている那智に謝罪。
結局俺を慰めてくれていた那智もつられてもらい泣き。兄弟揃って涙を流す事態になっちまったんだ。
ううん、首を横に振る那智はヘーキだと笑い、見上げてくる。
そんなに那智に笑いを返すと、俺は那智から貰ったプレゼントを綺麗に鞄の中に仕舞った。
ヘッタクソで心の篭っている絵は後でじっくり見るとしよう。
花束は押し花にでもしてしおりにしよう。
貰った二粒のチョコレートは那智と一緒に食べよう。半分こした方が美味いもんな。
「那智、ありがとうな。大事にするから」
「はい」
誇らしげに頷く那智に、改めておにぎりを手渡す。
お茶の入ったペットボトルも手渡せば、「にいしゃ。コツンしよ!」よく分からないお願いをされた。
コツンって何だ?
首を傾げる俺に、那智は持っているペットボトルと俺のペットボトルをコツンと合わせて実演してみせてくれた。
「こーやってこっつんこするの! にーしゃ、おたんじょーびだから、しよー?」
「ああ、乾杯のことか。ん、いいよ」
こうして俺は那智とペットボトルのお茶で乾杯。
小さな誕生日パーティーをした。
それはとてもとても小さな誕生日パーティーだったけど、俺にとっては意味のある誕生日他ならなかった。
ケーキも何も無いけど、プレゼントも玩具じゃないけど、俺の誕生を祝ってくれる奴がいる。
それだけで幸せだった。
ひとりぼっちを過ごしてきた俺にとって大きな幸せだった。



