「うんとね、それからね。これ、にいしゃにあげる」
ポンッと紙の上に置かれたのは、二日くらい前に用意されていた貴重なアーモンドチョコレート二つ。
各々個包装されているそれは、那智の大好物だろうに、食べずに今日のために取っておいてくれたんだろう。
「にいしゃのたんじょーび、なち、とってもうれしい」
誰からも祝ってもらったことのない誕生日。
記憶上、両親からさえも祝ってもらったことのない誕生日は今日で十回目を迎える。
誰からも祝ってもらえない俺は、どうして生まれてきたのか、幼い頃から苦しんでいた。
どうして誰にも好きって言われないのか、毎日のように苦しんでいた。
「にいしゃ、あいがとー」
俺は那智を見つめた。
那智は花咲く笑顔で言ってきてくれる。
「にいしゃ、なちのにいしゃであいがとー」
ありがとう。
那智の兄さまで、ありがとう。
“あ り が と う”
俺の生にありがとうを言う奴がいてくれた。
俺の生を喜んでくれる奴がこんなにも身近にいた。
嗚呼、俺は生まれてきても良かった存在だったんだ。



