もしかしてトイレか?
聞けば、那智は違うと首を横に振って、「あんね」と小声でボソボソ。
「にいしゃ、なち。きょう、すっごく…うれしい」
そりゃもう、今日のハイテンション具合からしてみれば、嬉しいを超えてるだろうな。
「公園で遊べたもんな」笑いかけてやれば、「ちがうよ!」全力で否定された。
違うって、公園で遊べたから嬉しかったんじゃねえのか?
瞠目する俺に、「あんね」那智は顔を上げて、とっびきりの笑顔を見せた。
「なち、しってるよ。きょう、にいしゃのたんじょーびだって!」
あ…。
那智は憶えてくれてたのか、俺の誕生日。
随分前に教えたけど、那智は小さいからとっくに忘れてると思ってた。
なのに那智は憶えててくれた、俺の誕生日を。
「あんね、なち、ぷれてんと、あるの」
いそいそと那智は持参してきたリュックのチャックを開けて、折り畳まれたチラシ紙を数枚取り出す。
それから背中に隠していた花の束を紙に添えて、俺に差し出してきた。
那智の手がさっき汚れてたのは、俺に隠れて花を摘んでたからだろう。
名も知らない花は小さな束になって、チラシ紙を見栄え良くしている。
「にいしゃ、にいしゃ。
おたんじょーび、きょうね、きょうね! おめえとー!」
満面の笑顔で那智は俺に手作りのプレゼントを押し付けてきてくれる。
初めて貰う、神さま以外からのプレゼント。
人から貰う、プレゼント。
受け取った俺は震える手で、チラシの中身を開いた。
チラシの裏には沢山の絵。
俺と那智であろう下手くそな人間の絵。ご丁寧に名前が書き込まれてある。



