心中で舌を鳴らして、俺は声にそっぽ向いた。
聞かない振り、何も聞こえない振りだ。
「にいしゃ?」
スーッと滑り台から降りてきた那智は、砂だらけの手で俺の手を握ってくる。
「にいしゃ? どーしたの?」
見上げてくる那智に俺は表情を崩す。
「お腹減ったな」お昼にしよう、誤魔化すように弟の手を握り返して、俺は手洗い場に那智を連れて行った。
大丈夫、俺はヒトリじゃない。今は那智がいる。
近所の奴等がどうこう俺等を見ても気にしない。気にして堪るか。
俺は手洗い場で那智の手を綺麗に洗わせて、次に俺自身が手を洗って、やりきれない気持ちに目を瞑る。
だけど、どうしても向こうの声と視線が気になって…。
俺は気持ちを拭うようにいつまでも水で手を洗っていた。
いつまでもいつまでも、「にいしゃ、まだ?」那智が声を掛けてくれるまで手を洗っていた。
那智は俺が手を洗っている間に、また手を汚したみたいで、軽く砂がついていた。
何かしてたっぽいけど、俺はぼんやりしてたから…、「こら那智」相変わらずハイテンションの那智を捕まえて二度手を洗わせる。
「今から飯を食うってのに…、ったく、何してるんだ?」
俺の文句もなんのその、那智はへらへらっと笑っていた。
どうも今日の那智は様子がおかしい、気持ちが浮ついてるにも程がある。
まさか熱でも…いや、ねぇな。
那智の様子に不安を覚えながら、俺は手を引いてベンチに腰掛けた。
さっきの親子連れはまだ、向こうでボール遊びをしている。
可哀想だって言ってた会話はどこへやら。
俺等のことなんてまるで無かったように、子供と相手をしてる。
結局は他人事なんだ、俺等のことなんて。
フンッと鼻を鳴らして、俺はコンビニで買ったおにぎりを那智に手渡そうと手を突っ込んだ。
「中身は何がいい? おにぎりの中身。鮭かおかか、那智の好きな具を選べ」
隣に腰掛ける那智に声を掛ける。
「ん?」俺は首を捻る。
隣に座っていた那智がもじもじ、そわそわと体を動かしていた。



