首を傾げてる那智に、俺は一思案。
那智、俺のこと『兄さま』って呼んでたのか。
俺、いつも『兄ちゃん』って自分のことを呼んでた筈なのに、どっこでどうなったら『兄さま』になっちまったんだろ。
此処でちゃんと訂正しておくかなぁ。
「にいしゃー?」
俺の顔を覗き込んでくる那智に、「ま。いっか」自己完結。
那智がそう呼びたいなら呼んでもらってもいいし、那智も大きくなったら呼び方が換わるだろう。
そのまんまでも、悪い呼び方じゃないしな。
ちょっと古風だけど、那智がそう呼びたいなら無理に訂正する必要も無いだろ。
「那智は凄いな。兄さまの名前、ちゃんと分かってるじゃねえか」
俺も兄ちゃんから兄さまって呼び名を換える。
那智に対する小さな配慮だ。
けど那智は気付かず、俺の言葉にてれてれ。
「はるきにいしゃに、ほめらえた」
えへへ、照れる那智に俺は一笑を零す。
那智が生まれてから四年、俺の生活はこんなにも色付いた。
生きる事が楽しいって思えるようになったし、何よりも笑うことが多くなった。
ほんと、那智が生まれてきてくれて良かった。
俺の言うこと、ちゃんと素直に聞いてくれる良い子だし。俺のこと好きだって言ってくれるし。俺に笑いかけてくれるし。
―…那智はずっと俺の傍にいてくれるよな?
何処にも行かないよな?
離れていかないよな?
那智は近所の奴等と違う…、俺を見捨てたりはしないよな?
友達が出来たら、そっちに行っちまうなんてこと…、ないよな?
那智はずっと俺といてくれるよな?



