「那智が喋った! 俺の名前を呼んだ!」
童話本を放り出して、俺は那智を抱き上げるとその場でぐるぐるっと回った。
キャッキャ笑う那智に頬を寄せて、「那智が喋った」しかも最初の言葉が俺の名前。
嬉しくないわけなかった。
パパやママでもなく、俺の名前を呼んでくれた。
嗚呼、こんなに嬉しいなんて!
やっと那智が喋ってくれた、将来も安心だ。
だってあの那智がやっと俺の名前を……って、あれ、これじゃあ俺、那智の兄ちゃんじゃなくて親だな。
まあいいや、実質、俺が殆ど那智の世話看てるし、俺も苦だと思わないしな。
「那智が『にぃ』って呼んでくれた。ははっ、可愛いの」
「うー?」
「うー? じゃなくて、俺はにぃだぞ。にぃーちゃん」
キョトンとした目で見上げてくる那智は、ん? っと首を傾げてくる。
「にぃ?」呼んでくる那智に、
「何だ?」俺は一々返事を返してやる。
少しでも言葉を覚えてくれるように。



