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那智が生まれてからというものの、俺の生活は一変。
お母さんは那智が小さいこともあるせいか、叩く事が極端に減ったし(その代わり夜出かける事が多くなったけど)、俺は俺でひとりぼっちじゃなくなった。
毎日弟と一緒に寝てるんだ。
最初こそ一緒の布団に寝ることはできなかったけど、那智が大きくなるに連れて、一緒の布団で寝られるようになった。
弟のお世話をすることが楽しくて仕方がなかった。
那智は一人で物を食えない。一人でトイレも行けない。一人にすると泣く。
それをよく知ってたから、俺は那智の傍に居続けた。こいつは俺がいないと何にもできないって知ってるから。
小学校に通い始めてた俺だけど、学校が終わると真っ先に家に帰ることが多かった。
友達と遊ぶなんてこと、念頭にもなかったんだ。
一つひとつが大発見だった。
最初、首も据わってなかったのに、首が据わるようになって、ころんって寝返りができるようになって。
ひとりで座れるようにもなって(でも那智ったら鈍ちゃんなのか、よく後ろにひっくり返ってた)。
はいはいができるようになった時は、俺、すっげぇ感動した。
短い手足を動かしてこっちに来てくれる、それが可愛くて仕方がなかったんだ。
そしてつかまり立ち(椅子の脚にしがみ付いて那智は立とうと躍起になってた)、次第にひとりで歩けるようになって。
でも那智、なっかなか言葉は発してくれなかった。
言葉にもならない言葉は言うんだけど(「だぁ」とか「あぅ」とか)、なっかなか喋らなくて。
んー、実は那智って馬鹿だったのかなぁ。
ひとり座りする時、ひっくり返りすぎて頭でも打ったのかなぁ。
心配しながら、俺は毎日のように那智に話し掛けていた。



