【一章
  少年期 ―家族―】


―――お前の名前は那智だぞ、下川那智、那智、なーち。

んでもって俺は治樹だぞ、はーるーき。

お前の兄ちゃんだぞ。


―――むぁ?

―――むぁ?


―――あぅ…、あ?


―――わ、わっかんねぇ…。
んー、ガキの相手って難しいな。

どんくらいでガキって喋るんだろ…、早く那智が喋ってくれたらいいな。

那智に早く、兄ちゃんって呼ばれたい。

ずっとひとりぼっちだったけど、那智がいてくれたら、きっと孤独じゃなくなる。な?


―――あーうー。


―――あーうー…、って、やっぱ言葉は言ってくれねぇな。

早く兄ちゃんって呼んでくれよ、那智。