「那智、あいして…、俺を必要として…、名前を呼んで…」
「はい、治樹兄さまっ。
っ…、もっと強く噛んでいいですよっ、加減しなくていいです。不安は全部おれにください」
言われて興奮。
俺はもっと加減なく那智に噛み付いた。
「ぅぁ…」しなる体は懸命に痛みに耐えている。
俺はそれにまた興奮して、那智の体に残そうとする。
俺の付ける傷を、痕を、痛みを。
そうすることによって那智はもっと俺から離れられなくなる。
「くぅ…、にぃさ…、」
離れられなくなればいいんだ。
痛みに顔を顰める那智に笑い、傷付ける行為に興奮、口内にじんわり那智の血の味が広がって、俺は一層那智を求め始める。
それは兄弟同士では芽生える筈の無い、大きな独占欲。執着心。他人に対する嫉妬心。
俺等は普通の生活を送れば送るほど、普通ではなくなっていった。
手前がどんだけ普通じゃないかって、今更ながら気付かされていった。