「見られたくなかったんです…、そういう目で見られる、わかってるからぁ。変な目でみられるっ、わかってたからぁっ。
でも兄さまにだけは見せられる…、だってっ…いっじょに頑張りぬいたっ、証っ、だがら…。
にーざまっ、おれ…もう…教室に行きたくないでず。わがままっ、わかってるけどっ…もう」
―――…嗚呼、不謹慎だけど安心する俺がいる。
那智は教室に行かない。
ってことは、那智が知る筈の世界が消えちまうってことで。
なんて喜ばしいチャンスが巡ってきたんだろう。
そんなことを思う、残念な俺がいた。
「いいよ、那智。行かなくて」
俺は那智の体を抱き締めて、優しく囁いてやる。
「那智が元気ならそれでいい」
それに、教室にいたら那智に友達が出来ちまうしな(俺から離れて行く危険もある)。
本心を呑み込みながら、俺は那智に言う。那智の好きにすればいいって。
「俺はな、那智。那智が兄さまの傍で笑ってくれれば、それでいいんだ」
「にーざまぁ…ごめんなさい」
「馬鹿だな、何で謝るんだよ。随分と辛い思いしたな。
もういいから。勉強は兄さまが見てやるし、那智は家のことを頑張ってくれればいいさ。
ほらもう泣き止め、今日は兄さまと一緒に過ごそう。飯食って、問題集買って、俺と一緒に勉強して、んでもって俺の傍で笑って」
俺の言葉に涙を誘われたのか、那智はグシャグシャに顔を涙で汚す。
「辛かったな」
何度も声を掛けてやれば、うん、うん、那智は洟を啜ってかぶりを上下に振った。繰り返し繰り返し、振った。
「っ…、にーさまっ。うぇっ、にーざまっ」
グスグス、シュンシュン、洟を啜って那智が縋ってくる。
甘えを見せてくる那智に、俺は忍び笑いを浮かべつつ、背中を擦ってやった。



