叫ぶ那智に負けないように声音を張ると、ヒクっと那智が喉を引き攣らせて俺を見つめてきた。
「にぃ…?」
首を傾げて、ボロボロ涙を零して、俺に勢いよく抱きついたと思ったら今度こそ大声で泣き始めてしまった。
浴室に響く泣き声と縋ってくる那智の腕の強さに、俺は呆気に取られつつ、
「どうした那智。大丈夫、大丈夫だぞ。兄さま、此処にいるだろ?」
優しくあやしてやった。何度も名前を紡ぎながら。
この後、俺は落ち着いた那智を寝室に運んで着替えさせた。
泣き止んだ那智はケロッとした顔で俺に甘えてくる。変貌っぷりに俺は混乱に混乱だ。
「にーさまぁ、何処行ってたんです? ひとり…、寂しかったです」
「ああ、ごめんごめん。バイトに行ってたんだ」
さっきから何十回このやり取りをしたか。
困惑する俺に、那智はべったぁっと腕に縋って一緒じゃないとヤだなんて駄々を捏ねてきた。
その我が儘が俺に心地良さを与えてくる。明らかに那智はおかしい。
でも、俺がいなかったことに凄く拗ねてる那智を見ると必要とされてる気がして気がして。
「兄さまぁ、おれもう…学校行きたくないです」
ぶぅっと脹れる那智は唐突に学校に行きたくないと言い出す。
「ん?」さっき泣いたこと関係あるのか? 首を傾げる俺は理由を尋ねた。けど那智は行きたくないの一点張りで癇癪を起こす。
「兄さまのいない場所行きたくないですっ! ヤダヤダヤダヤダ―――ッ!」
「…那智。兄さまのいない場所、ヤか?」
「ヤです!」
―――…。
酷く歪んだ笑み浮かべる俺がいた。
「ヤか?」俺は那智の頭を撫でて、興奮してる弟を落ち着かせる。
うーっと唸ってる那智は俺に手を伸ばして、「抱っこ」甘えを見せてきた。
「ハイハイ」俺は那智の体を抱き上げてやる。
体を密接にすることで落ち着いたのか、那智はグリグリと肩口に顔を埋めてきた。



