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二人暮らしが始まり、俺等の生活は順風満帆だった。
 

春休み期間は二人で外食したり、買い物したり、映画を観に行ったり、今まで経験したことの無い生活を送っていた。

那智は植物が大好きだから、植物園にも足を運んだな。


俺はどれも同じ草に見えるんだけど、あいつは俺の手を引いて「これが薔薇で種類は~」薀蓄を語ってくれた。


正直言って半分も薀蓄を理解できなかったんだけど、那智が楽しけりゃそれでいいっかで自己完結。


人生初めてだらけの春休みを送ることが出来た。


休み期間が終わると俺は大学に進学、那智は中学に進学。

母親の虐待もない新たな生活を堪能していくんだろうなーっ、安易に考えていた。


けど…、実際はそうじゃなかった。

不安だらけな生活の始まりでもあったんだ。


というのも、虐待を受けていた頃と違い、今は生活にゆとりが出てきた。
すると人はあれこれ考える余裕が出来る。


俺も例外じゃなく…、中学に進学した那智のことであれこれ考えるようになったんだ。
 

ふたりぼっちの世界に依存している俺だ。
那智が他人に取られるんじゃないかって…、大きな不安を抱くようになった。

離れて行きやしない、那智は他人に気を許したりしない、だって約束したから。


そうは思っても…、俺は毎日不安に駆られていた。