振り返れば、「一緒に寝ていいですか?」那智が枕を持って恥ずかしそうに俺を見下ろしてくる。
ひとりじゃ眠れない、布団が広過ぎて眠れない、何だか布団が寒い。
ポツポツ零して、一緒に寝たいことを主張。
異存のない俺は布団を捲った。
那智も俺と同じことを思っていた、そのことに安堵しながら。
布団に潜ってくる那智は入るや否や俺に寄り添い、アッタカイと綻ぶ。
「兄さまの温もりがないから変な感じがしました。
暫く、一緒に寝ていいですか?
中学入学したら…、ちゃんとひとりで寝られるよう頑張りますから」
そんなことしなくていい。
俺に依存してりゃいいんだよ。
心中で否定、表向きじゃ「ああ、いいよ」良い兄貴を演じてみせた。
―…本当の自由を手に入れた筈なのに、何だろう、胸がざわつく。
俺は妙な感覚に襲われながら、那智と共に眠りに就いた。
本当の自由が手に入れば幸せになれる。
これからうんと幸せになるんだ。
この時の俺は、安易にそれを夢描いていた。
⇒終章