「―――…二人暮らし初めての夜がカップ麺だなんてな」
散々泣きじゃくった那智(と俺)は少ない荷物を片付けた後、新居となる居間で一緒に夕飯を食していた。
俺的には、二人暮らし初めての夜は手料理って心に理想図を描いてたのに、実際は片付けに追われて…、残念なことにカップ麺。
ロマンもクソもねぇや。
「これも美味しいですよ」
ニッと笑う那智は美味そうにカップ麺を啜っていた。
まあ、那智が喜ぶならいいけど…、それにしても残念な気分。
ずるずるっと麺を啜って心中で溜息。
那智と既に置いてあったテレビを観ながら、夕飯を胃袋に収めていく。
と、視線を感じて、俺は那智に目を向けた。
泣きすぎて瞼が腫れている那智だけど、ニコニコッと俺を見つめてずるずる麺を啜っている。
「お部屋に兄さまだけ。お母さんいない、凄く新鮮です」
「今日から二人暮らしなんだから、当たり前だろ」
「ふふっ、にーさまとおれだけ」
本当にふたりだけの世界ですね、那智は目尻をユルユルにして笑顔を大安売りしていた。
ご尤もだ、俺も思わず笑顔。
この部屋には二人だけしかいねぇ。
まったくの自由。新鮮極まりないし、これは俺の望んだ世界。心が躍る。



