「にーさまのおがげで…っ、じゆうでず…っ。
おれぇ…死ななくて…っ、良かったぁ…、にーざま…、と…、がんばってきてっ、よかったぁ…。
にいしゃ…、あいがと…」
感極まった那智は、その場でしゃがみ込み、堰切ったように声を漏らして涙を流し始めた。
思わずもらい泣きしそうになった。
バカヤロウ、ありがとうはこっちだ。
てめぇが俺の弟になってくれたおかげで、俺は此処まで頑張ろうって思えたんだぞ。
てめぇが俺を愛してくれたから、俺は我武者羅に自由を掴もうと行動を起こすことができた。
てめぇが生まれてきてくれたから、俺は今こうして生きているんだ。
「那智…、」
泣き崩れる弟に歩み寄って、小さな体躯を抱き締めて、背中を擦ってやる。
糸が切れたように泣き続ける那智は、今までの恐怖を俺に吐露した。
恐かった、毎日が恐くて未来に希望が持てなかった。
いつか母親に殺されるんじゃないかって思うほど、毎日に絶望していた。
那智の気持ちに相槌を打って、俺は優しく那智をあやしてやる。
「ほら、あんま泣くと目が溶けちまうぞ。
大丈夫、てめぇを傷付ける奴、もういねぇから。兄さまがこれからも守ってやるから。落ち着け」
「んっ…うん…っ、ん…っ、」
「大丈夫、ダイジョーブ。もうダイジョーブ、何も心配いらねぇ。
此処には那智を虐める奴もいねぇ、兄さまだけだ。
これからもっと幸せになるんだ。
泣いてたら、幸せになる度に泣く羽目になるぞ」
茶化してやっても、那智は涙を流し続けていた。
俺にありがとうと言いながら、自由にしてくれてありがとうと感謝しながら、ずっと…、落ち着くまで涙を流し続けていた。
俺も…、こっそりと涙を浮かべていたけど、那智に秘密。
もらい泣きしたことは、俺だけの秘密だ。



