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季節は巡り、俺は3月1日に無事に高校を卒業式を迎える。

俺の卒業式には那智が参加してくれた。唯一の家族が俺の晴れ舞台を見に来てくれたんだ。
俺自身、卒業に思うことは無いんだけど、那智が見に来てくれたことには大きな意味があると思っている。


んでもって卒業式が終わった俺は、那智を連れて不良達のたまり場に向かった。


一応、世話になった挨拶をしておこうと思ったんだ。

別れの言葉を告げるつもりは無かったけど、自由を手に入れ掛けている今、俺はもう孝之や忠志と付き合うつもりはなかった。


まあ表面上では、


「暫くは生活に手一杯だから顔を出せねぇや。
けど、てめぇ等のおかげで無事に家を出ることが出来る。サンキュな」

 
仲間ぶった挨拶をしておいた。
これくらいは仲間面しても良いと思ったんだ。


「これからだな治樹、頑張れよ」


孝之は自分のことのように熱を入れて声援。


「いつか飲もうな」


忠志は俺と飲む約束を交わしてきた。


その他諸々、何かしら言葉を貰ったけど、俺は受け取る振りをして右から左に流した。

これ以上、こいつ等と関わっても俺に利得は無い。
勿論、こいつ等にもだ。

お互い利得なんてないだろうから、俺はこいつ等と縁を切る。


「ま、不良も人情があるって分かったし。あん時、集られる対象になって良かったよ」

「そりゃ言わない約束だろー?」


「悪い悪い、孝之。うっかり本音が出た」


俺はいつものようにシニカルな笑みと挨拶を交わして、那智の手を引き、たむろ場を後にした。

その後、あいつ等がどうなったのか、俺には分からない。

ただ俺自身は二度と、不良達の前に姿を現すことはなかった。
二度と、な。