「名前、呼んで」
「治樹兄さま」
「もっと」
「治樹兄さま」
「もっと…、もっとっ…、兄さまを必要としてくれ。好きだって言ってくれ。愛してくれ」
じゃないとひとりぼっちになっちまう。
ひとりぼっち…、ひとり、誰にも名前を呼ばれない冷たい日々。冷酷な時間。酷な時代。
俺はあの中でひとり、ひとりで、孤独に生きてきた。
「い、やだ…いやだ…」
思い出すだけで、情けないほど体がガクガクと震えてくる。
じんわりと滲む視界を振り切って、「那智!」俺はあらんばかりに弟を抱き締めた。
独りは嫌だ嫌だ嫌だっ、ガキのように声を上げて温もりを掻き抱く。
そしたら腕の中にいる弟が微笑を零して、「ダイジョーブ」ポンポンと背中を叩いてくる。
「兄さまはひとりぼっちじゃありません。
此処にいるおれを忘れないで。
おれ達はふたりぼっち、ふたりぼっちはおれ達にとって不可分。
おれと兄さまは切っても切れない関係なんですよ。
仲を切り裂かれたらきっと、ウサギさんのように寂しくて死んじゃうんです。
―…治樹兄さま。大好きです」



