腕の中の温もりを貪るように、抱きすくめる。
アッタカイ温もりが愛情に渇いた心に潤いを与えてくれた。
「治樹兄さま」
名前を呼ぶ、その舌足らずな声が俺を満たしてくれる。
こいつは俺の、俺のなんだ。
他人になんざやらない。ガールフレンドも作らせないし、恋人だって作らせない。友達だって作らせて堪るか。
こいつは俺だけのものなんだ。
俺が那智を面倒看て、育てて、守ってきた。
これから先も俺は那智を守っていく。
守っていくんだよ。
「那智、兄さまの傍にいるんだぞ」
「はい」
不安な俺は那智に魔法の呪文を掛ける。
ガキの時に作った魔法の呪文、那智が俺から離れない(離れられない)魔法の呪文を何度も唱える。
「他人になんか気をやるなよ。他人なんか…、裏切るだけだから。
那智は俺を裏切らない。何があっても傍にいてくれた。だから俺は頑張れたんだ」
ぎゅっと腕の力を強くする。
そしたら那智も強く、俺の体に顔を埋めてきた。
「いつもおれを守ってくれた、大好きな治樹兄さま。
おれは兄さまのためなら何だってできます。
だって兄さまがこんなにも好きなんだから」
包み込むような愛情溢れた言葉。
涸渇している心にまた潤いが与えられ、欲深い俺はもっと言葉を、温もりを、愛情を求める。



