幸い、那智はテレビに夢中で気付いていないようだが、俺は向こうにガンを飛ばし、さっさと出て行くよう目で訴える。
こっちに視線を向けない母親は、飲み物だけ取るとさっさ部屋に戻って行った。
フンっ、俺は鼻を鳴らしてチョコを放り込む。
小癪な女だ。どーせ今日も家の中を自由に行き来できないからって外出するに違いない。
外出するならそれで結構、だけど二度と帰って来て欲しくねぇ。
中に入っていたアーモンドを噛み砕き、フツフツと感情を煮え滾らせていると、那智がごろんとソファーに横になる。
俺の膝に頭を預けて、見上げて、ニッと笑顔を見せて。
寝返り打つように体を横にして、俺の体に顔を埋め、頬を寄せてくる。
「にーさまのお膝、気持ちが良い。ソファーよりもずっと気持ちが良いです」
甘えを見せてくる那智が、俺は大好きだった。
こうして甘えられると那智は俺を必要としてくれるんだなって、強い実感が湧くから。
俺は口角を緩めて、柔和に目尻を下げると、那智を膝に抱き上げて、腕に閉じ込めて一緒にごろん。
狭いソファーに二人で寝転んだ。
少しでも身を捩れば落ちそうな幅だけど、その狭さが俺等には心地良かった。
「那智、幸せか?」
「はい…、暴力も何も無いですし、何より兄さまと一緒ですから。
兄さまとならいつだって幸せになれます」
「兄さまもだ。俺も那智と一緒なら、いつだって、どこだって」



