「ちょっと休憩するか。俺も疲れたしさ。
菓子でも食おう。那智の好きなチョコレート、買って来たんだぞ」
ちなみに盗んだわけじゃない。
堂々コンビニで買って来たチョコレートだ。
親の金ではあるけど、皆と同じように物を金で買って購入した。
普通にチョコレートが手に入る生活を送っているんだ、俺等は。
「チョコレート、食べたいです!」
真ん丸に目を輝かせる那智は垢抜けた笑顔を見せた。
問題集とノートを閉じ、俺の手を握ってくる。
俺はその手を握り返し、一緒にキッチンに向かうと棚からアーモンドチョコの入った箱を取って、ソファーに腰掛けた。
テレビを観ながら二人でチョコをパクパク。
甘味が口に出来るなんて、俺でさえ夢のように思える。
ほんっと頑張った甲斐があった。
こんなにも穏やかな生活が俺等の前に姿を現してくれるなんて。
今の俺達には暴力も罵声も何も無い、ただただ平穏が包み込んでくれている。
(幸せの第一歩、掴んだって感じだな)
テレビに熱中している那智の隣で、俺は弟の髪を梳きながら顔を綻ばせる。
と、俺等とは別の気配がリビングに入って来た。
俺は眼球だけ動かし、キッチンの方を流し目。息を殺しながら冷蔵庫から飲み物を取る母親の姿がそこにはあった。
さすがに母親と同じにはなりたくないから、虐待まではしないものの、極力俺等の前には姿を現してくれるなと命令している。
でないと那智が怯える。那智は母親を何よりトラウマにしてるんだから。



