「にーさま…ご飯アッタカイ…、とっても美味しい」

「ああ。ほんとにな」


「それに兄さまと一緒…、すごくしあわせ」


綻ぶ那智に、俺も思わず笑顔。


「どんどん食えよ。今日から仮自由なんだから」

「かりじゆう?」


もう十分に自由だと思うけれど。
キョトンとする那智に、本当の自由は家を出ることだと教えてやる。


「一緒に家を出て、二人でのんびり暮らそうって約束しただろ?
ずっと一緒にいる約束と合わせてさ。

兄さまは那智と二人っきりで暮らしたいんだ。
こんな家、いるだけ辛いだろ?」


「にーさま…」

「一緒に家を出よう、那智。自由になるんだ」


俺の言葉に那智がポロッと涙を零す。
すぐに手の甲で擦って、「兄さまとずっと一緒」笑顔を作ってみせた。


「にーさまの弟で本当に良かったです。にーさまがいてくれるから、おれも頑張れました」

「うん、兄さまもだ」


「ご飯食べたら、テレビ…一緒に観ましょう」

「ああ、今日から観放題だ」


「お風呂も一緒に入りましょー」

「ああ、湯船に浸かろうな」


「いつものことですけど一緒に寝ましょー」

「んじゃあ、今日は此処で寝てみるか、那智。ソファーの上で寝るって経験無いしな」


クシャリクシャリ、那智の頭を撫でて俺は満面の笑顔を零した。

ようやく訪れた仮自由の夜は、とても平和で平穏で那智の体温のように、気持ちが温かかった。


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