「―――…わぁ、本当にこれ、食べてもいいんでしょうか」



ごくり、那智は生唾を飲んで食卓に目を落とす。

怒涛のような出来事の後、俺はワインボトルの母親に片付けをさせて、ちょい遊んで(何をしたかはご想像にお任せ)、部屋に行くよう命令して、不良達に協力してくれた礼を言って(奴等は何もしてないと笑ってくれた)。

帰っていく不良達を見送って(なんかあったら連絡しろって言われた)、自室に待機させていた那智とこうしてリビングで悠々夕飯を迎えている。

元々は母親のために作っていた夕飯。
それを自分が食べれるなんて夢のよう、那智は俺と食卓を交互に見てアタフタあたふた。


さて、そんな今日の夕飯は炊きたて白飯(俺達にとっちゃごちそうだぞ)、

コロッケ(滅多に食えねぇって)、

それからサラダ(切れっ端ばっかのサラダじゃねえ!)、

味噌汁(冷えたもんしか飲めなかったからホットが夢みてぇに思える)。


凄いご馳走を目の前にしている。
那智はどうしよう、どうしよう、と落ち着きなくそわそわそわそわ。


「し、しかもリビングで…こうやって兄さまとゆっくりご飯…、食べれるなんて」

「なーち。落ち着け。これは夢でも何でもない、現実だ」


向かい側に座る那智に声を掛けて、食べようと合図。

うんっと頷く那智は手を合わせてイタダキマス。
俺と一緒に飯を食い始める。


「………」

「………」


無言で俺等は視線を合わせて、一笑。

真面目に美味い。
どうしよう、飯がこんなにも美味いなんて思ったことないんだけど。