「治樹…、てめぇっ」
今の行為、どういう行為か分かってのことだろうな。
どすの利いた声にも能面、俺は早足で那智に歩み寄ると、背後に隠してテーブルを蹴り飛ばした。
ワインボトルやグラスが急降下。
床に向かって落ち、叩きつけられ、大きな音を奏でる。
瞠目する母親、「兄さま?」何が何だか分からない那智は俺を見上げた。
クツリと笑い、俺は那智の頭を撫でて、最愛の家族を見下ろす。
「那智、待たせたな。もう我慢しなくてもいいぞ。
これからは、このババアの命令も言い付けも守らなくていい。飯の用意も何もしなくていい。
従順ぶっていた俺等だけど、ついにこいつから卒業する時がきたんだよ」
「え…」
「どういう身分だ、治樹!」
怒声を張る母親。
おやおや、どういう身分も何も無いってのになぁ。
「今、見せてやるよ」
俺は那智に下がってるよう言うと、転がっていたワインボトルを掴んでシニカルに笑う。
「どういう身分?
そりゃー…こういう身分だよ、クソババア!」
渾身の力を籠めて、俺はワインボトルを床に叩きつける。
甲高いガラス音と中身が四方八方に飛び散り、床を汚す。
「ククッ、あっはっはっはっは! 怖いか? そりゃそうだろうな! 従順な息子が手に噛み付いてきたんだからな!」
俺の変貌に母親は後退、怯みを見せるけど構わず俺は相手を蹴っ飛ばす。
後ろに倒れる相手の腹を踏んで、体重を掛けて、呻くそいつに俺はにやり。



