「なーあ、治樹。その本おもろい? エッチ本?」
俺の読んでいる文庫を指差して、官能本かどうかを聞いてくる。
「違う」一蹴しても、「だってニヤついてたから」官能小説かと思ってさ、優一は垢抜けた笑顔を浮かべる。
それさえ鬱陶しい、俺は鼻を鳴らしてスルー。
「ツンツンだ」
へらへらっと笑って優一は珈琲牛乳の入ったパックを軽く揺する。
ストローを銜えて中身を飲んでいる相手を見やり、俺は思わず、
「てめぇ、楽しいか? 俺の傍にいて」
能天気野郎に聞いちまう。楽しいかって。
俺の傍にいても、相手にすらしねぇのに…、そいつは勿論だと笑顔で返した。
「治樹の傍が一番落ち着くし、楽しいぞー」
「あっそう」
「デレた?」
「デレてるように見えるか?」
眉値をつり上げる俺に、優一は目を細めて綻ぶ。
何がどうしたらそんな表情になるのか、俺には分からない。気色が悪い、綻びに悪態を付いて本に視線を戻す。
「本当に楽しいよ、だって治樹の傍だから」
無視する俺に構わず、優一は語り部となる。
どーせ上辺だけだろ、心中毒づく俺に対し、優一は意味深に笑みを深めた。



