「兄さま!」
不良達が去ろうと道端に置いているバイクに跨っている最中、那智が勝手口から外に出て俺のもとに駆け寄って来る。
手にはくたびれたタオル。
母親の許可も貰ってないだろうに、俺の身を案じて駆け寄って来てくれる。
「血が…」迷うことなく患部に当ててくる那智は、帰りが遅かったことを咎めることもなく、大丈夫かと声を掛けてきてくれた。
なんでだろう。
那智の声を聞いた途端、胸の痛みが増して、傷付けられる恐怖が蘇って、大きな安堵が胸の内にジンワリ広がった。
人らしい心が蘇ってくるような気がする。
「大丈夫ですか?」声に弾かれて、俺は那智を掻き抱いた。
「どこか痛いんですか? 兄さま? 治樹兄さま?」
痛いよ。
ボトルで殴られた頭も、殴られた頬も、火傷した体も、心も…、。
「少しだけ、那智…。少しだけ…、ほんの少しだけ…、こうさせて」
唯一、俺を愛してくれる弟を抱き締めて、そのぬくもり顔を埋める。
うんっと頷く那智は、俺の背中を慰めてくれるように擦ってくれた。
その手がただただ愛おしい。



