「治樹! てめぇ、家のこともしねぇで夜遊びか?!」
「ち、違います。今日は学校のッ、っつ!」
蹴られて、俺は玄関向こうに尻餅。
髪を掴まれてビンタを食らう。
甘んじて体罰を受ける俺を余所に、母親は一旦玄関に戻ると空のワインボトルを持って、容赦なく振り上げそのまま…、ゴン―ッ、パリン―ッ、鈍い音とガラスの割れる音が同時鼓膜を振動した。
流石に今のは痛いってもんじゃねえ…。
頭部を押さえる俺に対し、「今日は飯抜きだ」ついでに一時間、そこで反省しろ。
荒々しく扉を閉めて、中から鍵を掛けられる。閉め出されたようだ。
「いってぇ…」
アリエネェよな、今のは。
押さえている手の平を引いて、視線を落とせば、嗚呼、血が出てらぁ。
だよなぁ、頭部が燃えてるみてぇに熱いし痛ぇし。
少しばかし眩暈もする。
参った、今のは相当なダメージだ。
もういいや。
俺はその場で仰向けに寝転んで、眩暈を抑えようと努める。
「は…治樹!」
「シッ、江島。声を抑えろ。気付かれる。……大丈夫か、下川」
と、帰った筈の不良二人が俺の視界に飛び込んでくる。
忍び足で敷地に入ってくるや、「血が出てるな」寝転んでいる俺を抱き起こす孝之と、「しっかりしろ」傷の具合を診てくれる忠志。
驚きはしない。
実は二人がこっそりと俺の後をつけて今の様子を窺っていたことに、俺は気付いていた。
気付いていて、何も知らない振りをしていた。
すべては計画の内。



