「ま、慣れてるからな。気にしちゃねぇよ」
「治樹…、お前らしくないぞ。喧嘩に強いお前がこうもあっさり母親にヤられちまうなんて」
「……そりゃ…」
「お前だったら、お前の腕だったら、母親だってすぐに伸せるだろ? なあ!」
「やめろ、江島。下川の気持ちも分かってやれ。どうにもなんねぇことだってあるだろ? 下川には下川の事情があるんだよ」
仲間の不良に止められて、「悪い」感情が昂ぶったと孝之は謝罪してくる。
群れている不良の殆どは俺が虐待を受けてることを知っていた。
わざと俺がばらした。同情心を買われるのは嫌だったけど、仲間意識を利用するために仕方が無かった。
こうでもしねぇといざって時、こいつ等から手を貸して貰えねぇからな。
けど利用…、か。
チクリと傷む心中に俺は失笑する。
俺も大概悪い奴だな。
奴等の気持ちを踏み躙るようなこと、思ってるんだから。救えねぇ奴だ。
だからって気持ちを変えるつもりはねぇ。
俺はこいつ等とつるんでも、心を許す気なんざサラサラねぇんだ。
これも俺と那智のため、ふたりで生きていくためだ。仕方が無いことなんだよ。
自分自身に言い聞かせる。



