(~~~っ、このド変態ショタコンが!)
殺意にまみれた俺は、取り出した長包丁の刃先を見つめた。
変態を暴走させて、もしも那智を押し倒されてヤろうとしたら、その時は迷わず…、迷わず…。
念入りに包丁の刃先を砥石で研いでおこう。
流し台の隅に放置されていた砥石を鷲掴みにして、荒々しく研ぐ。
(あのクソババア。自分の利益のために息子を売りやがって)
我慢だ、我慢。
限界まで我慢に我慢を重ねて、もしも感情が爆ぜてしまったらその時はその時。
でもソレは最終手段だ。
簡単に爆ぜさせちまったら、俺等は何のために今の今まで我慢してたんだよ。
もう少しだけ耐えろ、俺。
那智だって耐えてるんだ。
耐えて耐えてたえて、今は犬のように従順に。
今の俺等は従順な犬、オアズケ状態にされている、良い子ぶった忠犬なんだ。
言い聞かせてはみるけど、込み上げてくる殺意はどうしようもない。
下唇を噛み締めていた俺は、人知れず手の甲でそこを拭った。
赤い筋が手の甲で伸びていたけど、気付かない振りをした。
どうにか殺意を押し殺して、時間をやり過ごしていると母親が戻って来た。
変態…、じゃねえ、晩酌を堪能中の押元と、ぎこちない手で酒を注いでいる那智(懸命にセクハラに耐えている)、んでもってダンマリつまみを作っている俺を各々流し目にした後、あいつは楽しんでいるかと押元に質問。
ご機嫌で答える押元に、一笑する芙美子は意味深に俺を見てきた。
……なんか、嫌な予感がするなおい。
「治樹、つまみを作ったら部屋に戻って良い」
「え? 俺だけですか?」
「ああ、お前だけだ。文句あるのか?」
大有りに決まってるだろうがっ、クソババア!
心中で舌打ちをしながらも、(今のところ)絶対服従の存在には逆らえない。
二つ返事で返すと、俺は出来上がった湯豆腐とフライドポテトをテーブルに置いてリビングを後にした。
その際、那智を見るんだけど、あいつ気丈にも笑顔で「おやすみなさい」演技を振舞ってみせた。
……ごめん、傍にいてやれなくて。



