「あの、皆川さん?」
皆川さんの名前を呼ぶと、皆川さんは笑みを深くした。
「急な仕事なんだけど、ね。今からロケ地に行くわ。」
「急な仕事って…?」
「ちょっとした演技をしてもらうの。今までにドラマをいくつもしてきた女優なら、即席で、演技ぐらいできるわよね?」
皆川さんの言葉に、私は固まる。
「即席で、演技…?」
ほんとに急な、しかもかなり過酷な仕事に、私は頭が真っ白になる。
「あの…台本とかは…」
微かな希望を胸に聞くと、皆川さんにばっさりと切り捨てられた。
「そんなものないわよ。」
「そんなぁ…」
涙目になる私をよそに、皆川さんは涼しい顔をしてロケ地へと車を走らせた。

