許されない、キスをしよう。






「…じゃ、そろそろ行くね。」


大きなスーツケースを持って、またサングラスをかけなおす蒼。

その姿に、ツキンと胸の奥が小さく痛んだ。




「…うん。いってらっしゃい。」

だめだめ。
最後くらい、女優らしく笑顔で見送ろう。
私は笑みを浮かべて、蒼を見た。




「…ふっ。大丈夫だよ、律萪ちゃん。ちゃんと帰ってくるからさ。」

蒼は私の心を見透かしたように笑うと、私を抱き締めた。




「…私も、頑張るから。みんなに認めてもらえる女優になって、蒼とのことも認めてもらうんだから…!」


…頑張ろう。
蒼のファンにも、誰にも文句言われないくらいの女優になるために…。




「うん。楽しみにしてる。」

そう囁くと、蒼は私を解放した。





「…じゃあね。」


そう言ってひらひらと手を振りながら、蒼の姿はゲートの向こうへと消えた──…