だけど彼はあまりにも脆かった。

誰かのちょっとした一言で傷付いて、なかなか立ち直ることができなかった。


あたしにできたことは、彼の傷を受け止めることだけだった。


「俺は何も悪くない…」

「うん、悪くないよ」

「あいつらがおかしいんだ。あいつらがバカなだけなんだ」

「うん、そうだね」


彼の傷をひとつ吸い取るたびあたしの心は黒く汚れていく。
彼は回復していく。

それでよかった。

あたしを必要としてくれるなら、傷付いたって構わなかった。

「愛してる、満希」


その一言で全部救われる気がしたの。
それ以上なんて望まなかった。