それにしても色々あったな、今日は。

というか、あれはイジメ…なのか。
初等部から今まで、イジメにあったことはなかった。それもこれも彼女達が言っていたように、私の傍にはいつも、旭ちゃんが居てくれたからなんだけれど。

そう考えると、明日からが怖い。
今日はたまたま、吉沢くんが来てくれたから捻挫ですんだけれど、いつもそうタイミング良く救いがくるとは思えない。

思い出すのは、遥か昔に父から受けた暴力…
ただ堪えることしかできなかった過去の自分が、再び蘇る。

…――旭ちゃん…

不意に、携帯のディスプレイで時間を確認した。示されていた時間は午後8時。もうそろそろ旭ちゃんに電話をする時間だと思い、そのまま携帯で旭ちゃんの番号を呼び出す。

だけど通話ボタンに伸びた親指は、ぴたり、と動きを止めた。

私は、旭ちゃんに電話していいのだろうかと、その資格はあるのだろうかと、不意に不安が込み上げる。

旭ちゃんを裏切っている。
誓いを冒涜している。

それらが思いのほかうしろめたくて、通話ボタンを押すはずだった指はいつのまにか、電源ボタンを連打していた。

私は最低だと、その思いだけが頭を巡る。
蓋をしきれない罪悪感が頭をもたげて、私を飲み込もうとする。

…――これじゃあ、旭ちゃんに電話なんかできないよ。

首を絞めているのは自分だと、それはわかっていたけれど。





【CHAPTER:04/side*SHIZUKU/END】