悔しくて、悲しくて、情けなくて。
自然と涙が視界を歪ませる。

それでも涙を流してしまったら負けな気がして、空を見上げてギュッと堪えた。


「……旭、ちゃん――」


大切な人の名前を呼んでも、すぐ傍には居ない。優しいぬくもりを、感じられない。それが一層私を心細くさせた。

…――旭ちゃん。

旭ちゃんがいてくれたら、きっと。
こんなことにはならなかったのに。


◆◆◆


体育館で神部先輩に会って、ただ休ませてもらおうと思っていたのに。やはり目敏かった神部先輩は、私の足の異常をすぐさま察したらしい。

ご丁寧にも付添人として大城くんを私につけ、さっさと病院に行けと強制的に命令された後、今に至る。


「良かったやん、軽い捻挫で。」

「……うん。」


診察は比較的早く終わり、念のためと渡された松葉杖なんてつきながら、帰路を大城くんと歩いていた。

けれど、どんなに一生懸命笑っても、さっきのことが気掛かりで気まずい。しだいに、微妙な沈黙が私達を包み始める。