『もしもし、旭ちゃん?どうしたの?』

「……ううん。ちょっと、雫の声が聞きたくなった。」

『ふふっ、何それ。』


でも安心できたのと同時に、今度はまた違う不安が過ぎる。

だってやっぱり、雫は何も聞いてこない。それどころか、サクの話に触れようとはしない。


『……旭ちゃん?』


思案に耽り言葉を止めたあたしの鼓膜を、雫の不思議そうな声が刺激した。ハッと我に返り、携帯を持ち直す。


「あぁ、うん。……それより雫、部活?」

『うん、そうだよ!旭ちゃんは?』


でもようやく発した問いは、ただ自分の首を絞めただけだった。
何とか話題を繋ごうとしたのに、明らかに間違えてしまった気がする。

だって雫は部活でも、あたしは?
あたしは、ただのサボりに他ならない。

それに、下手に嘘をついたところですぐバレそうだし、学校を早退しただなんて言ったら、雫に心配をかけてしまいそうだ。


「……あたしは、サボり。」


だから結局、そんなありのままを答えた。
えー、という言葉とともに、携帯越しに雫が呆れたように笑った気がしたから、あたしも合わせて笑った。