合宿最終日、別れ際の雫の表情が頭から離れない。

雫にあんな顔をさせた自分が許せなくて、隠しきれないクセに笑った雫が哀しかった。

だからこそあの晩、落ち着いたのを見計らって、雫に電話をかけたのに。


「……もしもし。雫…、」

『あ、旭ちゃん!昨日と今日はお疲れ様でした。相変わらず迷惑かけちゃってごめんね?』

「そんなこと、ないけど。」


まるであたしの言葉を聞きたくない…否、聞こうともせずに、普段より若干早口で言葉を紡ぎ続ける。

早口なこと以外、特に感じる異変はない。
けれど、あからさまにあたしの言葉を遮ろうとする雰囲気に、言おうと思っていたことを言葉にすることは憚られた。

――きっと、あたしが無理に喋ったら、今以上に雫を傷つける。

そんな気がしたから、雫の話に相槌を打つだけで電話を終えたんだっけ。

誰も居ない、だだっ広い屋上。
吹き抜ける風に乱れた横髪を耳にかけ、青々と広がる空にため息をひとつ零した。